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反り腰の原因と直し方――反りは正常、戻せないことが問題!

反り腰、原因のアイキャッチ。女性の反り腰の写真。

力を抜くと腰が反ってしまう。ストレッチや骨盤矯正をしても、しばらくするとまた元どおり。ぽっこりお腹もなかなか取れない。そんな経験から「自分は反り腰だ」と思っている方は多いです。

でも現場で見ていると、問題は「腰が反っていること」そのものではないことがほとんどです。柔道整復師として多くの姿勢を見てきて言えるのは、反れること自体はむしろ悪くなく、本当の問題は、反った位置が”いつもの状態”になって、そのまま過ごしてしまうことだ、ということ。意識すれば自分で戻せる方も多いのに、無意識ではその位置が当たり前になってしまうのです。この記事では、なぜそうなるのか、どうすれば自分で戻せるようになるのかを、現場の視点で順番に説明します。

目次

反り腰とは?――腰は少し反っているのが正常

反り腰は一般に、骨盤が前に傾いて腰の反りが強くなった状態と説明されます。ただ、ここで先に押さえてほしいことがあります。腰のカーブ(前弯)は、もともと誰の背骨にもあるものです。背骨はまっすぐが正解ではなく、ゆるやかなS字カーブがあるのが正常な形です。その正常な範囲を超えて反りすぎた腰が、本当の反り腰です。

私が考える良い姿勢は、横から見て耳・肩・股関節・膝・くるぶしが一直線に整っていること――これが体を支える「軸」です。背骨を一本の棒のようにまっすぐ伸ばすこととは違い、軸さえ通っていれば、腰のカーブはあっていいのです。

良い姿勢と反り腰の比較図。

大事なのは「反りの量」より「戻せるか」

しかも、ちょうどよい反りの量は人によって違います。骨盤の生まれつきの傾き(専門的には骨盤の入射角と言います)によって、適正なカーブの深さは変わります。万人共通の「理想のカーブ」というものは存在しません。

だから、腰が反っていること自体を悪者にする必要はありません。問題になるのは、反りの「程度」と、反りすぎた位置から自分で「戻せるかどうか」です。少し反っているのが正解で、反りすぎている腰と、正常範囲の反りは別のもの。多くの方が「反り腰」という言葉だけで、正常なカーブまで悪いものだと思い込んでしまっています。

その反り腰、本当に反り腰ですか

自分で思う反り腰、実は別のタイプかもしれない

実は、自分で「反り腰」だと思っている方の多くが、別のタイプの崩れだったりします。私のところでも、カウンセリングシートで「反り腰」にチェックを入れた方を見ていくと、その多くが反り腰ではなくスウェイバックでした。

スウェイバックは、足首で支える軸(くるぶしの真上)から外れて骨盤が前にスライドし、上半身が後ろに倒れて、腰そのものは反っていないのに体全体としては反って見える姿勢です。いわば「反り腰に見える猫背」です。逆に、腰のカーブが減って平らになっているフラットバックの方もいます。見た目や思い込みでは、これらは区別がつきにくいのです。

壁チェックだけでは決められない

よく紹介される「壁に背中を当てて、腰の隙間に手が入るかどうか」のチェックも、それだけでは決め手になりません。お尻の厚みがあるだけでも壁との隙間は広がるので、隙間がある=反り腰、とは言い切れないのです。

そもそも巻き肩・ストレートネック・猫背・フラットバックといった崩れは、まったく別々の現象ではなく、一つの崩れを注目する部位で呼び分けているだけなので、実際にはいくつかが混ざって現れます。純粋に一つだけ、というほうが少ないくらいです。

自分がどのタイプかの見分け方は、それだけで一本の話になるので、ここでは深入りしません。気になる方は「反り腰に見える猫背=スウェイバック」の記事で詳しく触れています。

スウェイバック・反り腰・猫背系(猫背・巻き肩・ストレートネック・フラットバック)の比較図。

反りすぎたまま過ごすと、どこに出るか

ここから先は、見分けた結果「やっぱり反りすぎている」という方に向けた話です。反りすぎた位置がいつもの状態になって、そのまま過ごしていると、体のいくつかの場所にサインが出てきます。

  • 腰に負担が偏る……重い・張るといった感覚が出てくることがあります。
  • 肋骨が前に開いてくる……みぞおちの下のあばらが前にパカッと開いた状態(リブフレア)になりやすくなります。
  • 呼吸が浅くなる……しっかり吐ききれず、浅い呼吸になりがちです。

一見バラバラに見えますが、この三つは根っこが同じ一つの問題から来ています。この記事では、まず腰で何が起きているか(次の章)、続いて同じことが肋骨と呼吸にどう出るか(後半)を、順番にほどいていきます。

腰が反れること自体は悪くない――足りないのは「戻す側」

しっかり反れる力があるのは、むしろ良い兆候

ここがこの記事の一番伝えたいところです。もし腰をしっかり反らせられるなら、それは背中の筋肉(背筋)が働いて、背骨を反らせる力が出ている証拠です。その”反らせる力”がある分、姿勢としてはむしろ良い方に近いと言えます。だから、さきほどのデメリットを見て「反っている自分はダメだ」と思う必要はありません。問題は反れることではなく、反りすぎた位置から戻す側が足りていないことです。

足りないのは「戻す側」=お腹

少し用語を入れておきます。私は、普段から使われすぎて働きすぎている筋肉を「使いすぎ筋」、逆に使われずにサボりがちな筋肉を「サボり筋」と呼んで分けて考えています。反り腰の方は、背筋を使って反る側はできている。足りないのは、反りすぎを戻す側――つまりお腹(腹筋)です。

良い姿勢は、実は一本道でできています。腹筋は、もともと体を丸める方向の動きを担当する筋肉です。だから良い姿勢は、背筋で反って、その丸める力で少しだけ戻す、の組み合わせでできています。この二つが合わさると、ちょうどよい位置に整います。反り腰は「背筋で反れたけれど、お腹で戻しきれていない」状態で、言ってみれば良い姿勢の一歩手前なのです。

腹筋群の解剖図。腹直筋と腹横筋が映り、腹斜筋も含めて説明している。

放っておくと、腰に負担が偏る

お腹というサボり筋が普段は出番をもらえず、反った位置のままになりやすい。崩れること自体は、動いていれば誰にでも起きますし、意識すれば自分で戻せる方も多い。問題は、反った位置がいつのまにか「いつもの状態」になって、そのまま過ごしてしまうことのほうです。

反った位置のまま長い時間を過ごすと、腰の一部に負担が集中して、重い・張るといった感覚が出てくることがあります。腰を反らせる腰の筋肉が反らせることと支えることを一手に引き受けて、頑張りすぎるためです。つまり、戻す側が弱いせいで一部が無理をしている、という見方です。

腰をそらせる腰の筋肉の解剖図。脊柱起立筋・多裂筋・腰方形筋。

お腹で戻せると、腰の負担が抜ける

現場でも「お腹を意識したら腰がラクになった」と言われることはよくあります。必ずそうなるわけではありませんが、お腹で戻せると腰の負担が抜けやすい、という手応えはあります。

なお、腰の痛みが強い・長く続く場合は、自己判断せず一度医療機関で診てもらってください。

お腹だけでは、今度は逆に崩れる――背筋とすねも要る

お腹が足りない、と聞くと「ではお腹だけ使えばいい」と思いたくなりますが、ここに落とし穴があります。反りすぎをお腹で戻すというのは、そもそも体を丸める方向=猫背方向の運動だからです。

戻しすぎると猫背まで行ってしまう

お腹で反りすぎを戻していくと、ちょうどよい位置で止まればいいのですが、戻す力だけだと止まらずに、今度は猫背の方まで行き過ぎてしまいます。ここで効いてくるのが背筋です。背筋は「反らせる側」なので、戻していく動きに対してブレーキのように働き、猫背になる手前で踏みとどまらせてくれます。お腹で戻し、背筋で行き過ぎを止める。この二つが釣り合ったところが、ちょうどよい位置です。

実際に、お腹を凹ませようとしてみてください。背中で反る意識を入れないと、自然と体が丸まって、猫背の方へ近づくのが分かると思います。

猫背(巻き肩・ストレートネックを含む)姿勢について解説しています。

猫背の仲間。フラットバックについてもこちらで解説しています。

お腹を使うと重心が前に流れやすい――そこですねが要る

もう一つ。すねを上手に使えると、足首の真上に体をまっすぐ整えて立つ軸を保つことができます。この軸が保てていないままお腹を使うと、重心が前へ流れて骨盤が前にスライドし、今度はスウェイバック――あの「反り腰に見える猫背」の方へ崩れていきます。立ってお腹に夢中になるときほど、この前への流れは出やすくなります。

スウェイバックについて詳しくはこちらで解説しています。

結局、必要なものは皆同じ

つまり、反り腰の人にとってはお腹が最優先ですが、背筋もすねも結局は必要です。「自分のタイプの運動だけやればいい」ではなく、優先順位が違うだけで、必要なものは皆、同じ一本の軸に行き着きます。お腹だけを使ってバランスを失うと、猫背やスウェイバックといった別の崩れに傾く。だからこそ、お腹を戻す側の主役にしながら、背筋とすねも一緒に使えるようにしていくことが大事です。それぞれの戻し方は、各タイプの記事で掘り下げています。

良い姿勢の画像。腹筋だけで戻すと姿勢が崩れることを示す図

肋骨の開き(リブフレア)も、まったく同じこと

ここからは、後半で予告した肋骨と呼吸の話です。みぞおちの下のあばらの前のふちが開いてしまうのがリブフレア(リブは肋骨、フレアは開くという意味)といいます。腰で起きていたのは「反れるけれど(得意)、戻れない(苦手)」でしたが、肋骨では「開くのは得意、戻す(締める)のは苦手」として同じように出ます。

開くのは得意、締めるのは苦手で硬い

さらに、使わない動きは硬くなりやすい、という性質があります。開く方向は普段からよく使うので柔らかく動けるのに、締める方向は普段ほとんど使わないので、だんだん動かしにくく硬くなっていく。だから締める方向は「サボり筋で力が出にくい」だけでなく「そもそも動かしにくい」という二重のしんどさを抱えやすいのです。現場でも、開く方向は楽なのに締める方向は途端にしんどそうにする方が多く、ここはそれだけ締める方向は硬く、使い慣れてないんだな、と見ていて感じます。

柔軟性の性質はこちらの記事で解説しています。

ここで、さきほどの「腹筋は体を丸める筋肉」という話が効いてきます。腹筋を上手に使えるようになると、ただ体を丸めるだけでなく、開いた肋骨を内に締めることもできます。丸めるのと締めるのは同じ腹筋の働きの別の面で、この「締める」を取り戻すことが、そのままリブフレアの解決に繋がります。

肋骨の開く・閉じるを視覚化した比較図。

お腹を使うと、その場でウエストが締まる

実際に現場で、メジャーで測りながらお腹を使ってもらうと、その場で胴回りが3〜5cmほど締まることがあって、よく驚かれます(変化の量には個人差があります)。これは、お腹がちゃんと開いた肋骨を締められる、ということが目で見える瞬間です。続けていけば普段の状態も変わっていく、というのは私の仮説・考え方ですが、期待ができる変化だと思います。

開いたままだと、呼吸も浅くなる

呼吸も、この延長にあります。肋骨が開いたままだと、すでに少し息を吸い込んだような位置が”いつもの状態”になってしまいます。そこからさらに吸って吐いてを繰り返すので、効率が悪い。しかも締める方向が硬いので、しっかり吐ききることもできません。結果として、吐く側の幅が狭くなって、浅い呼吸になります。呼吸の「位置」が吸う側にずれている、というイメージです。

呼吸の位置のイメージ図。直線の目盛りで正(吐く)負(吸う)で呼吸の位置を表現している。

「締めて戻す」を技術として身につける

反りすぎを戻す力も、肋骨を締める力も、しっかり吐く力も、根っこは同じ「お腹で締める」一つの技術です。これを、いきなり日常の中で自然にやろうとしてもうまくいきません。まずは能動的に、少し大げさなくらい意識して使う練習から始めます。これは姿勢づくりそのものと同じで、最初は誇張して、だんだん当たり前にしていく順番です。

入口は、吐いてお腹を感じること

最初の入口としておすすめなのが、息を吐きながらお腹を薄く凹ませる動き(ドローイン)です。吐く動きとお腹を使う動きは同じものなので、しっかり吐くと、お腹が自然と働くのが感じられます。まずはこの「吐く=お腹が使える」という感覚を、自分の体でつかむことが出発点になります。やり方そのものは、ドローインの記事で詳しく触れています。

どんな姿勢で締めるかが、いちばん大事

ここで一つ、とても大事な注意があります。お腹を締めること自体より、どんな姿勢で締めるかのほうが大事だ、ということです。

というのも、猫背のままお腹を締める練習を続けると、猫背のままお腹を締めるのが”上手”になってしまうからです。体は、繰り返した動きをそのまま覚えます。悪い姿勢のまま反復すると、悪い姿勢のほうが身についてしまう。だから、さきほどの章で見たとおり、お腹で戻すときは背中で反る側も一緒に使って猫背に戻らないようにし、立って行うときは重心が前に流れないようにする。この二つを外さないことが、そのまま「正しい姿勢で締める」ことになります。

使いこなすと、呼吸の幅も戻ってくる

お腹を使えるようになってくると、もう一つ変わってくるものがあります。呼吸です。さきほど、肋骨が開いたままだと吐く幅が狭くなって呼吸が浅くなる、と説明しました。逆に、お腹を使ってしっかり吐けるようになると、吐く側の幅が戻ってきて、吸う側にずれていた呼吸の位置も真ん中の方へ戻っていく。浅かった呼吸がラクになっていく、と考えています。

ここは「お腹を鍛えれば肺活量が増える」といった話ではなく、あくまで”吐く幅が戻って、いつもの呼吸の位置が整っていく”という意味です。直接それを確かめたデータがあるわけではないので、現時点では私の考え方として受け取ってください。それでも、吐く力そのものはお腹を使う練習で取り戻せる、ここは現場でも手応えのあるところです。

回数より、まず締まりを確かめる

大事なのは、何回やるかよりも、吐くたびにお腹がちゃんと締まっているかを、一回ずつ感じることです。締まる感覚を意識できるからこそ、繰り返した分が身についていきます。

頻度は、回数を決めて気負うよりも、日々の中で思い出したときに軽くやるくらいで十分です。

ドローインについてはこちらの記事で詳しく解説しています。

結局、反り腰も肋骨も呼吸も「技術」

ここまで見てきた反り腰も、肋骨の開きも、浅い呼吸も、根っこは同じ「お腹で締めて戻せない」ことでした。そして反りすぎを戻す力は、特別な才能ではなく、知って練習すればつかめる技術です。

良い姿勢とは、もともと崩れない人になることではありません。崩れても、自分で立て直せる人になることです。今は崩れた位置が体にとって「当たり前」になってしまっているので、それを能動的に、正しい位置へ作り直していく。感覚を校正し直す作業だと考えると分かりやすいと思います。

整体や矯正で一時的にラクになるのは、体に「変化」が起きるからで、それ自体は悪いことではありません。ただ、外から入れてもらう変化は、どうしても期間限定になりやすいものです。自分で立て直せるようになると、それに頼り続けなくてよくなっていきます。

反り腰が直らないのは、才能でも体質でもなく、まだ習っていないだけ――現場で多くの方を見てきて、私はそう感じています。

まとめ

  • 反れること自体は問題ではない。腰のカーブはもともと正常で、悪いのは反りすぎたまま過ごすこと。
  • 反りすぎを戻す力は「お腹で締める」一つの技術。肋骨の開き(リブフレア)も浅い呼吸も、根は同じ「締めて戻せない」。
  • ただしお腹だけでは逆に崩れる。お腹で戻し、背筋で行き過ぎを止め、立つときはすねで軸を保つ。優先は違っても、必要なものは一本の軸に行き着く。

反り腰という言葉に振り回されると、「とにかく反りをなくさなきゃ」と逆方向に頑張ってしまいがちです。でも本当に必要なのは、反れる体のまま、反りすぎを戻す力を身につけること。それは習って練習すれば、誰でも身につけられる技術です。

自分がどのタイプの崩れに当てはまるのか、まずはそこから知りたい方は、姿勢のタイプ別の入口からたどってみてください。

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