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肩こりは、実は首こり——揉んでも回しても戻る本当の理由

肩こりに悩む女性の写真。

肩を回しても、揉んでもらっても、その時は楽になるのに、気づけばまた同じところが張っている。多くの人が「肩こり体質だから」で片づけてしまいますが、戻ってくるのにはちゃんと理由があります。そしてその理由の入口は、たいてい「肩」ではなく「首」にあります。そして戻るかどうかを分けているのは、姿勢の良し悪しよりも「体の使い方」です。

この記事では、肩こりの正体と、なぜ戻るのか、どこから手をつければいいのか。順番に見ていきましょう。

目次

その「肩こり」、動かしているのは肩じゃない

まず、こっている場所の正体から。私たちが「肩がこった」と感じてさわる、首の付け根から肩にかけての盛り上がり。あれの主役は、僧帽筋(そうぼうきん)の上部と、肩甲挙筋(けんこうきょきん)という筋肉です。

この二つは、付着のスタートが首側にあります。僧帽筋の上部は後頭部や首の骨から、肩甲挙筋は首の骨(頸椎)から始まって、肩甲骨や鎖骨につながっている。つまり、こりを生んでいるのは「頭と首を支えるために働く筋肉」であって、腕を動かす「肩関節の筋肉」ではないのです。

腕そのものを動かす、いわゆる「肩」の主役は三角筋(さんかくきん)という別の筋肉です。三角筋はふつう、肩こりの主な原因にはなりません。

首から始まる僧帽筋上部・肩甲挙筋と、腕を動かす三角筋の位置を色分けした図

首から始まる僧帽筋上部・肩甲挙筋と、腕を動かす三角筋の位置を色分けした図

※画像は準備中です(図1:こっている場所の再定義/neck-shoulder-muscles-map.png)

ちなみに「首こり」という言葉に、医学的に決まった定義はありません。俗称です。(肩こりも元は俗称ですが、こちらには医学的な定義があります。)ただ、いま見たとおり、肩こりとして感じている張りの多くは、機能的には首から始まる筋肉のしわざ。だから「肩こりと首こり、どっちなの?」と分けることにあまり意味はなく、”肩こりの多くは、実のところ首の問題”と捉えたほうが正確です。

肩こりの原因とは?

デスクワーク、スマホ、眼精疲労、ストレス、なで肩、運動不足……いろいろ挙げられます。ただ、例えばデスクワーク。本当にデスクワークが原因ならデスクワークを辞めれば治るはず。でも、辞めても治らない人もいます。そもそも、デスクワークと無縁な人でもこる人もいます。だとすると、「デスクワークが原因」と言い切るのは、ちょっと乱暴な気がします。

私は、接骨院で働いている時に、このことがずっと不思議でした。ストレッチでも、もみほぐしでも、なんなら一見関係なさそうな離れた部位を触っても、良くなる人は良くなる。それなのに、同じことをしても全く良くならない人もいる。たくさんの肩こりに触れてきたのに、本当の原因ってなんだろう、と。

きっとこの記事を開いたあなたも、同じように考えていたのではないでしょうか?猫背矯正や骨盤矯正を受けたり、自分の体にあう先生や方法を探して、あちこち渡り歩いていませんか?

でも、これら全てに共通していることがありました。同じ筋肉を、同じ使い方で、休ませず使い続けているということです。言いかえれば、いつも同じ「疲れさせ方」をしている。本当の犯人は、姿勢の種類でも筋肉の名前でもなく、この”体の使い方のクセ”。たくさんの肩こりに向き合ってきて、私がたどり着いた答えです。

なぜ首肩に負担が集まるのか

ここからは、いまの研究で考えられている肩こりになる筋書きを紹介します。

頭は意外と重く、それが前に出るほど、支える首肩の筋肉はがんばり続けることになります。頭を前で支えるために肩をすくめ、その流れで肩が前に入り(巻き肩)、背中が丸まり(猫背)、首のカーブが減る(ストレートネック)。これらは別々の不調に見えて、実は”ひとつの崩れ”を、注目する場所ごとに呼び分けているだけのことが多いのです。

頭が前に出る姿勢から巻き肩・猫背・ストレートネックへつながる崩れの連鎖を一人の人物で示した図

頭が前に出る姿勢から巻き肩・猫背・ストレートネックへつながる崩れの連鎖を一人の人物で示した図

※画像は準備中です(図2:崩れの連鎖/posture-collapse-chain.png)

このとき、よく働きすぎる筋肉(使いすぎ筋)と、休んで働けていない筋肉(サボり筋)がセットで生まれます。首肩の表側がいつも働き、背中側がサボる——この組み合わせが崩れを固定します。専門的には上位交差症候群と呼ばれる説明モデルに近い考え方です。

腕を使うたびに、肩をすくめている

もうひとつ、こりやすさを説明できる使い方があります。本来、腕を上げる動きは「肩関節そのものの動き」と「肩甲骨の動き」が分担しています。ところが、肩関節だけをうまく使えないと、たいして上げなくていい場面でも肩甲骨ごと持ち上げて——つまり肩をすくめて——動かしてしまう。すると、本来上げる必要のない日常動作のたびに僧帽筋が働きます。肩こりに悩む人がこれだけ多いのは、それだけ「こりやすい=疲れさせやすい使い方」が日常にあふれているからです。

「使い続ける」が、なぜ痛みになるのか

では、その「使い続ける」がなぜ痛みになるのか。筋肉の中では、軽い力で長く働く小さなまとまりほど、先に動き出して最後まで休めない、という性質があります。休む番が回ってこない一部が、ずっと働かされて音を上げる——これが「疲れさせ方」の正体だと考えられています。

この細かい仕組みには学説の対立もありますが、対立する説どうしでも結論は一致しています。同じところを休ませず、負荷を交代・分散できないと、筋肉は痛みを出す。

つまり、肩こりは「筋肉が硬いから」起きるのではなく、「同じ場所が休めなくなった」結果として起きます。だから、手をつけるべきは「使い方=疲れさせ方」です。

自分がどの崩れに当てはまるかは、部位ごとの記事で確認できます。

→ 巻き肩 / → スマホ首・ストレートネック / → 僧帽筋・肩甲挙筋のこり

揉む・ほぐす・胸を張る、が続かない理由

ここで、痛みの「原因」をふたつに分けてみます。”いま痛い”原因と、”また戻る”原因です。

いま痛い原因(たまった発痛物質)と、また戻る原因(疲れさせ方)を左右に分けた図

いま痛い原因(たまった発痛物質)と、また戻る原因(疲れさせ方)を左右に分けた図

※画像は準備中です(図3:いま痛い vs 戻る/now-pain-vs-recurrence.png)

整体やマッサージ、温めることは、”いま痛い”のほうにはちゃんと効きます。さわられた刺激が痛みの信号にフタをし、体がゆるんで緊張の悪循環が切れ、固まっていたところが一時的に楽になる。これは気のせいではなく、その場の痛みを下げる実際の効果です。だから「ほぐしても無駄」は言いすぎです。

ただ、それで”また戻る”のは、使い方=疲れさせ方が変わっていないから。楽になった裏でも、同じ筋肉は同じように使われ続け、また同じ場所が音を上げます。借りてきた”ゆるみ”は、使い方を変えない限り返さなければならない、というイメージです。

わかりやすく言えば、”いま痛い”原因は、疲れすぎた筋肉が出すSOS信号(そして、それをどれだけ痛いと感じるかには脳の状態も関わります)。”また戻る”原因は、疲れさせ方が変わっていないということです。

「血行が悪いから」ではない

「血行が悪いからこる」という説明もよく聞きますが、これは実際の測定とあまり合いません。慢性的にこっている人の筋肉でも、安静時の血の流れ自体は健康な人と変わらない(むしろ多いという報告すらある)。問題は血の”量”ではなく、休まず使い続けた場所で痛みのもとになる物質がたまり、使ったあとの片づけ(回復)が追いつかないこと。だから「血が足りないから痛い」ではなく、「出し続けていて片づかない」が実態に近い。温めて楽になるのも、その片づけを一時的に手伝い、痛みにフタをするからで、”原因の血行不良を治した”わけではありません。

「胸を張ればいい」でもない

また、姿勢を良くしようとして胸張っても、すでに働きすぎの僧帽筋が真っ先に働いてしまいます。多くの場合、結局肩をあげてしまい、また疲れます。そして、胸を張ること自体が疲れるので結局やめてしまいます。

悪い姿勢が必ず肩こり・首こりを引き起こすわけじゃない

もうひとつ、研究で分かっていることがあります。「姿勢が悪い角度そのもの」と肩や首の痛みは、調べてみると、言われているほど強くは結びつきません。スマホで下を向く角度と首の痛みに関連が見られなかった、という報告も複数あります。これは「姿勢なんて関係ない」という意味ではありません。”角度”の話と、”使い方”の話は分けて考えるべき話、ということです。

本当の問題は、悪い角度になることそのものより、その崩れから動けない・戻せないこと。ずっと同じ姿勢で固まり、別の使い方に逃がせないこと。ここに睡眠不足やストレスといった要素も重なって、痛みとして表に出てきます。同じ猫背でも、こまめに動ける人・別の使い方に逃がせる人は、こりにくいものです。

だから、目指すのは「正しい姿勢を24時間キープすること」ではありません。崩れても戻せる・別の向きに使い方を逃がせる”使い方の幅”を取り戻すこと。良い姿勢は、固定する角度ではなく、技術です。

つまり、”また戻る”を止める鍵は使い方にあります。「良い姿勢がいい」のではなく、良い姿勢を作れるだけの使い方を増やすことが解決になる。そして肩こりに関していえば、その中心は「肩を下げられること」です。

改善の入口:まず「外に捻る」だけ

肩を下げる、と聞くと、多くの人がグッと肩甲骨を寄せたり、胸を張ったりします。でも、力で寄せにいくと、結局すくめる筋肉(上部の僧帽筋)が働いて、かえって肩が上がってしまう。胸を張りすぎれば今度は腰が反る。これでは逆戻りです。

肩を下げておくには、本来は背中側の筋肉で支えられると楽です。でも、多くの人はその背中を使う感覚そのものを持っていません。いきなり「背中で支えろ」と言われても、どこをどう使うかが分からないのが普通です。

そこで入口としておすすめなのが、肩を「下げる」より先に、腕を外に捻る(外旋する)こと。腕を内側に捻ると肩は上がりやすく、外側に捻ると肩は自然と下がる方向に整います。そして多くの人は、この”外に捻る”がそもそも習慣になっていません。まずは、力まずに腕を外へ捻る感覚を思い出すところから。これだけでも、肩の”疲れさせ方”を少しずらすことができます。

腕を内側に捻ると肩が上がり、外側に捻ると肩が下がることを矢印で示した図

腕を内側に捻ると肩が上がり、外側に捻ると肩が下がることを矢印で示した図

※画像は準備中です(図4:改善の入口=外旋/shoulder-external-rotation.png)

(背中で肩を支え続ける感覚そのものの作り込みは、もう一段先の話になります。ここではまず「外に捻る」を入口に。)

その肩こり、本当に「肩こり」?

最後に、いちばん大事な注意を。次のようなサインがある場合は、ここまでの話とは別の問題が隠れていることがあります。セルフケアの前に、整形外科などで一度みてもらってください。

  • 腕や手に広がるしびれ・電気が走るような痛み、力が入りにくい
  • 腕を上げる動きで、しびれや冷えが出る
  • 肩関節そのものが痛く、髪を結ぶ・背中に手を回す動きができない/夜、痛みで目が覚める
  • じっとしていても痛い、安静時や夜間に悪化する、原因不明の体重減少や発熱を伴う
  • 強くぶつけた・転んだあとの、強い首肩の痛み

こうしたものは、四十肩・五十肩、腱板(けんばん)のトラブル、胸郭出口症候群、首の神経の圧迫など、それぞれ対応が異なります。整体や運動でその場の痛みがやわらぐことはあっても、それは”危険が消えた”という意味ではありません。原因を見きわめるには検査が必要です。

それぞれの見分け方は、こちらで詳しく。

→ その肩こり、本当に肩?(危険な肩こりと受診の目安)

まとめ

  • こっている主役は、首から始まる筋肉(僧帽筋上部・肩甲挙筋)。腕を動かす本当の肩=三角筋は、ふつうこらない。
  • 揉む・ほぐす・温めるは”いま痛い”を取れる。でも戻るのは、痛みを生む”疲れさせ方”が変わっていないから。
  • 犯人は「姿勢の悪い角度」そのものより、崩れたまま動けない・戻せないこと。

だから、良い姿勢は24時間キープする”形”ではなく、崩れても戻せる”技術”です。肩こりでいえば、その第一歩は「肩を下げられること」。

まずは入口として、腕を「外に捻る」ところから始めてみてください。そして、自分がどの崩れタイプなのかは、下の記事でたしかめられます。

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