何もないところでつまずく原因は“つま先”が上がっていないから?

あなたが現在見ているのは 何もないところでつまずく原因は“つま先”が上がっていないから?

「最近、なんでもない道でつまずくことが増えた気がする」
「まだ若いのに足が引っかかるって、何かのサイン?」

そう感じている方は、実は少なくありません。
不注意や年齢のせいにされがちなこの現象、
本当の原因は“つま先がうまく上がっていない”ことにあります。

この記事では、つまづきと足の引っかかりを引き起こすメカニズム、そしてそれを防ぐための「前脛骨筋(ぜんけいこつきん)」というすねの筋肉の重要な役割について、姿勢や歩行改善の視点から詳しく解説します。
今日から実践できる転倒予防のための具体的な対策まで、分かりやすくご紹介していきます。

「何もないところでつまづく」って、どういうこと?

若いのにつまづくって、なんだか不安…

階段でもない、段差もない平坦な道で、
「つま先が引っかかって転びそうになった」そんな経験はないでしょうか。
特に気になるのが、若い年代でもこの現象が起こることです。

実はこれ、単なる不注意や集中力の問題ではないケースも少なくありません。
体の歪み姿勢の崩れが影響している可能性も考えられます。

年のせいじゃないの?と言われても納得できない

高齢者の方なら「筋力低下かな?」と納得しやすいかもしれませんが、まだ30代、40代でも頻繁につまずくとなると、話は別です。

それは、運動不足による影響だけでなく、体の使い方体のバランスに「小さなズレ」が生じているサインかもしれません。

実は“つま先が上がってない”だけって知ってた?

多くのケースで問題になっているのが、「足が上がっていない」というより、
正確には「つま先が上がっていない」状態です。

太ももや膝はそれなりに上がっているのに、
つま先の先端だけが下を向いていると、わずかな凹凸でも引っかかりやすくなります。

つまづきやすい理由を説明する写真。左側はつま先が当たっていて小さい段差に指が当たらないが、右側の写真は同じ膝の高さでもつま先が小さい段差に当たってしまう。

つまずきの原因は「前脛骨筋」がサボっているから?

足を上げてるつもりでも、つま先は上がってない?

歩行時、意識せずに足を上げているつもりでも、
「足の甲を持ち上げる力(足関節の背屈)」が弱いと、つま先だけが地面に残ることがあります。

この重要な動きを担っているのが、すねの外側にある「前脛骨筋」という筋肉です。

「前脛骨筋」ってどんな筋肉?どこにある?

前脛骨筋は、膝の下あたりから足首の外側にかけて伸びる細長い下腿の筋肉です。
つま先を上に引き上げる(足関節の背屈)役割があり、その機能から「つまずき防止筋」と呼ばれることもあります。

この筋肉が十分に機能しないと、足首の動きが鈍くなり、
地面とのわずかな段差に足先が引っかかりやすくなるのです。
また、姿勢保持にも重要な役割を果たしています。

前脛骨筋の解剖イラスト

歩き方や姿勢のクセで、どんどん使わなくなる

前脛骨筋は、普段の歩き方や姿勢のクセによって、だんだん「サボりがちになる」筋肉です。
特に、足の裏全体ではなく、つま先側に体重が乗るクセがある方は注意が必要です。

また、スマホを見ながら歩くなどの歩行習慣も、姿勢の悪さや重心バランスの崩れにつながり、
つま先の動きを鈍らせる大きな要因となります。

前脛骨筋が使えない人がやりがちな3つのクセ

つま先重心になっている(ヒール履いてる人に多い)

体重が過度につま先にかかりすぎると(つま先重心)、前脛骨筋は使われにくくなります。
特にヒールの高い靴を履く習慣がある方や、日常的につま先重心のクセがある方は要注意です。
重心の偏りがあると、つま先を上げる準備が整わず、つまずきやすくなってしまいます。

前脛骨筋は、「かかとをついてから、つま先を離す」という正しい歩行サイクルの中で活性化されます。
この動きは足底筋群とも密接に関連しています。

足元を見ながら歩くクセがある

下を見ながら歩くクセがあると、頭が前に倒れ、自然と体が丸まり(猫背)やすくなります。
体が丸まると、骨盤が後傾し、重心が前に流れてしまい、足の運びが悪くなります。

「前を向いて歩く」ことを意識することで、姿勢が改善され、足が前に出しやすくなり、かかとからの着地が自然と楽になります。
これは重心移動の改善にも繋がります。

足音が“ドスドス”している

歩くたびに重い足音が鳴る(ドスドス歩き)ようなら、それは足を引きずっている(すり足)サインかもしれません。この歩行パターンは、足の振り上げが不十分で、前脛骨筋が十分に機能していない可能性が高いです。

意識して「静かに着地する」ことを心がけることで、前脛骨筋をはじめとする下肢の筋肉が適切に使われるようになり、関節への負担軽減にも繋がります。

今日からできる!つま先を上げる練習と意識のコツ

歩くときは「かかと着地→つま先離れ」を意識

前脛骨筋を活性化させる最も自然な動きが、「正しい歩行リズム」です。
まずは次のポイントを意識しながら歩き方を見直してみましょう。

  • かかとから地面に接地する(かかと着地)
  • 足裏全体を転がすように体重を移動する(ローリング動作)
  • つま先が最後に地面から離れる(つま先蹴り出し)

この重心移動の流れを意識して繰り返すだけでも、前脛骨筋は確実に活性化していきます。

片足立ちや椅子に座ったままの“つま先上げトレ”

家の中でも簡単にできるトレーニングを紹介します。

椅子に座ってつま先上げ

①椅子に座り、足を床につける。
②かかとは床につけたまま、つま先を「できるだけ高く」持ち上げる足の甲を上げる意識)。
③この状態を3秒キープし、ゆっくり下ろす。これを10回繰り返す。(1日2セットを目安)

片足ずつ行うことで、左右の足のバランス筋力の違いにも気づきやすくなります。

応用編:つま先上げ足踏み

慣れてきたら、つま先を上げたまま足踏みをしてみましょう。
足を上げた時に自然とつま先を上げるクセをつけるための、非常に効果的な運動になります。

つま先を自然に上げるためのバランストレーニング

かかと重心を意識するだけでも、前脛骨筋が活性化してつま先があがりやすくなります。

①足の指をグーにして、爪で地面を触る
②小指側を浮かせて、親指の爪とかかとだけ地面に触れる状態にする
③1分×1~3セット

信号待ちや、電車のホームで意識できると◎

かかと重心とは?正しい立ち方で姿勢と疲れにくさを整える方法

まとめ

  • つまずきやすさは「足が上がっていない」ことが主な原因
     歩幅は変わっていないのに何もないところで引っかかる場合、実は足先の動きが不十分で「つま先が上がっていない」ことがほとんどです。
  • 前脛骨筋が弱ると、つま先が持ち上がらなくなる
     ふくらはぎの前側にある前脛骨筋は、つま先を引き上げる重要な筋肉。ここがうまく働かないと、小さな段差でもひっかかりやすくなります。
  • 日常生活では“つま先を上げる動き”を意識的に使う習慣がない
     階段の上りや歩行時でも、重心がかかと側にないと前脛骨筋はあまり使われません。意識的なトレーニングが必要です。

何もない場所でのつまずきは、体が発している小さなサインかもしれません。
日常の「クセ」を見直すだけでも、つまづきを減らすことは十分に可能です。

まずは、「つま先を上げる」感覚を育てていくことが、つまづきグセ改善への第一歩になります。


関連記事

その他の筋肉の解説はこちら
なぜ痛みや姿勢がすぐ戻る?「使いすぎ筋」と「サボり筋」が引き起こす体の偏りと拮抗筋と主動筋の関係

偏平足の治し方を解説!インソールだけでは不十分?足底筋を鍛えて改善する3ステップ

ふくらはぎが張る人は腰痛に要注意?関係と対策を解説!