ストレートネックって、名前はよく聞くけど、何がどうなってるのかわからない。
首が痛くて、肩もこって、整体に通ってもすぐ戻ってしまう。
それは、「元に戻ってしまう原因」が変わっていないからかもしれません。
この記事では、ストレートネック・スマホ首が繰り返される本当の理由と、その対処法をわかりやすく解説します。
スマホ首、なぜ治らない?実は「使い方のクセ」が根本原因だった!
ストレートネック(スマホ首)って結局なに?
ストレートネック(スマホ首)とは、本来ゆるやかなカーブを描いている首の骨(頸椎)が、まっすぐに近づいている状態を指します。
首の自然なカーブが失われることで、頭を支える筋肉や関節に過剰な負担がかかりやすくなります。
この状態が長く続くと、首の痛みが起きやすくなります。
さらに、肩こりや頭痛、時には腕のしびれまで起こることがあります。
見た目には「頭が前に出ている」「猫背っぽく見える」といった特徴が出やすく、写真で気づく方も少なくありません。

スマホのせい?姿勢だけじゃない本当の原因
「スマホばかり見てるから」「姿勢が悪いから」
そう言われても、気をつけてもすぐ戻ってしまう。
それは単なる姿勢の問題ではなく、“使い方のクセ”が根本にあるからです。
人の頭は約5kgあります。
アゴを前に突き出す姿勢になると、首の筋肉は本来のバランスを失います。
そうすると、負担をかける必要のない筋肉が代わりに頑張るようになります。
その中心的な筋肉が「後頭下筋群」です。
これは、後頭部と首の付け根に付着していて、頭を支えるためにこの筋肉が緊張しっぱなしになり、結果としてストレートネックに陥っていくのです。
▶後頭部・首の付け根のこりは“奥の筋肉”が原因?後頭下筋群と姿勢・ストレートネックの関係
この後頭下筋群が働きすぎないように、その反対にある筋肉たち「椎前筋」を上手に使えるようにする必要があります。
椎前筋とは?
「椎前筋(ついぜんきん)」とは、首の奥深くにある4つのインナーマッスル総称です。
「深頸屈筋群(しんけいくっきんぐん)」や「頸部深層屈筋群(しんぶしんそうくっきんぐん)」とも呼ばれます。
構成するのは次の4つの筋肉です。
- 前頭直筋(ぜんとうちょっきん)
- 頚長筋(けいちょうきん)
- 外側頭直筋(がいそくとうちょっきん)
- 頭長筋(とうちょうきん)」
顎を軽く引いたり、首を曲げる動きで働き、頭を正しい位置で支える役割を果たします。
デスクワークやスマホ使用で首が前に出る姿勢が続くと、この筋肉が働かなくなり、いわゆる“サボり筋”状態に。
その結果、表面の筋肉が代わりに緊張し、負担が集中します。
そして、首こり・肩こりやストレートネックにつながりやすくなります。
反対の筋肉、椎前筋がしっかり働くことで、首全体のバランスが安定します。
姿勢も保ちやすくなります。
根本から整えるには、この筋肉を“使えるようにする”ことが欠かせません。
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※画像出典:
© 2025 Visible Body より「Human Anatomy Atlas」の画面を引用
(解説目的および情報提供のために使用)
https://www.visiblebody.com/
ほぐしてもストレッチしても戻るのはなぜ?
「ほぐしても楽にならない。」「戻りが早い。」
そう感じる方は、表層の筋肉だけをケアしているかもしれません。
首の奥にある椎前筋は、意識して使わないと活性化しません。
そして、スマホを見る姿勢のように、頭を前に突き出したままだとこの筋肉は“サボって”しまいます。
そうなると、姿勢を支えるために胸の筋肉や肩の筋肉ばかりが働き、首の奥の筋肉はどんどん弱くなっていきます。
結果、首の持久力が落ち、いい姿勢を保とうとしてもすぐに崩れてしまうのです。
実際の研究でも、スマホの使用時間が長いほど、首の筋肉の持久力が低下することが示されています。
筋持久力の低下は、慢性的な不調の要因となるのです。
本当に必要なのは“使い方”の練習
改善に必要なのは、正しい姿勢を「形として作る」ことではありません。
「正しい姿勢を支えられる体」を育てることです。
そのカギを握るのが、椎前筋の使い方。
これを意識してトレーニングすることで、姿勢を支える力そのものを底上げできます。
椎前筋を意識したエクササイズ例
①仰向けに寝て、軽くあごを引く(天井に対して首をまっすぐにする)
②頭をほんの少し浮かせ、喉の奥に力が入る感覚を探す
③その状態を5秒キープし、10回繰り返す
ポイントは、首の前側を「軽く引き込む」感覚です。
首の後ろ側が硬くならないように意識すると、深層の筋肉が働きやすくなります。
首まわりの筋力強化も効果的
強化運動には、筋持久力を高める目的もあります。
軽い負荷で、姿勢を保ちながら動作を行うことで、自然と筋肉の「支える力」が育っていきます。
研究では、首の筋肉を活性化させるよりも、筋力を強化するほうが改善効果が高いとする報告もあります。
運動の組み合わせによって、より再発しにくい状態を目指すことが可能です。
まとめ
- スマホ首の進行には筋持久力の低下が関与する
長時間のスマートフォン使用により、首の深部筋の持久力が低下し、姿勢保持が困難になることが報告されています。
参考文献:Kim et al.『Relationships between cervical sagittal posture, muscle endurance, and smartphone addiction in university students』BMC Musculoskeletal Disorders(2023) - 深頸屈筋群(椎前筋)を意識した安定化運動はストレートネックに有効
慢性的な首の不調に対し、深頸屈筋群などを活性化させる安定化エクササイズが可動域と機能改善に有意な効果を示しました。
参考文献:Akkaya et al.『Investigation of the effectiveness of neck stabilization exercises in patients with chronic neck pain』Medical Science Monitor(2022) - 首の筋力強化は姿勢回復に有利に働く
単なる動作ではなく、首の筋肉そのものを鍛える強化型の運動が、痛み軽減と姿勢改善においてより明確な効果をもたらす可能性があります。
参考文献:Xie et al.『Efficacy of neck muscle activation versus strengthening for adults with chronic neck pain: a randomized controlled trial』BMJ Open Sport & Exercise Medicine(2024)
姿勢のクセは、気づかないうちに筋肉の使い方を変えてしまいます。
見た目だけを正すのではなく、その奥にある“支える力”に目を向けることが大切です。
本当に必要なのは、使い方を変える「ちょっとした練習」です。
正しく使えば、首はもっと楽に支えられるようになります。
その他の筋肉の解説はこちら。
▶なぜ痛みや姿勢がすぐ戻る?「使いすぎ筋」と「サボり筋」が引き起こす体の偏りと拮抗筋と主動筋の関係
良い姿勢の作り方を解説しています。
▶良い姿勢とは?骨の軸で支える嬉しい効果と改善方法まとめ

柔道整復師/姿勢改善パーソナルトレーナー
さいたま柔整専門学校卒業。
三郷市内グループ接骨院で院長を歴任。
現在、「姿勢改善Studio きずな日暮里」を運営中。