スポーツ中継を見ていて「あの選手、すごい動体視力だね」という解説を聞いたことはありませんか。
なんとなく「動くものを見る力」だとわかっていても、具体的にどんな能力なのか、自分の動体視力はどの程度なのか気になりますよね。
動体視力は、スポーツパフォーマンスを左右するだけでなく、運転や歩行など日常生活の安全にも深く関わっている重要な視覚能力です。
この記事では、動体視力の基本知識から効果的な鍛え方まで、わかりやすく詳しく解説していきます。
動体視力の基本知識~静止視力との違いから種類まで~
動体視力と静止視力の違いって何?
動体視力とは、動いている対象を正確に見続ける能力のことです。
健康診断でおなじみの視力検査は「静止視力」を測るもので、止まっているものをどれだけはっきり見えるかを調べています。
一方、動体視力は動いているボールや車などを追いかけながら、その形や文字を識別する力を指します。
興味深いことに、静止視力が良い方でも動体視力が低いケースは珍しくありません。
これは、動体視力が単純な「見る力」だけでなく、目の動きをコントロールする筋肉や脳の情報処理能力も関係しているためです。
動体視力には2つの種類がある!KVAとDVAを詳しく解説
動体視力は、動きの方向によって2つのタイプに分類されます。
専門的にはKVA動体視力とDVA動体視力と呼ばれ、それぞれ異なる特徴を持っています。
KVA動体視力(前後方向)の特徴
KVA動体視力は、自分に向かって近づいてくる、または遠ざかっていく対象を見る能力です。
野球のピッチャーが投げるボールを打者が見極める場面や、車の運転中に前方から近づく対向車を認識する際に重要な役割を果たします。
この能力が優れていると、距離感の把握や衝突回避の判断が素早くできるようになります。
DVA動体視力(横方向)の特徴
DVA動体視力は、左右に動く対象を追跡する能力を指します。
サッカーでパスされたボールを目で追ったり、テニスでラリー中のボールを見続けたりする場面で活躍します。
横断歩道で左右から来る車を確認する際にも、このDVA動体視力が重要な働きをしています。
動体視力が必要な場面とは?
動体視力が活躍する場面は、想像以上に多岐にわたります。
スポーツではボールゲーム全般、格闘技、レーシングスポーツなどで欠かせない能力です。
日常生活では、車の運転、歩行時の安全確認、エスカレーターの乗り降りなど、私たちが意識しないうちに使っている重要な能力なのです。
スポーツパフォーマンスを左右する動体視力の重要性
競技別に見る動体視力の活用シーン
スポーツにおける動体視力の重要性は、競技の特性によって大きく異なります。
特に球技系スポーツでは、ボールの軌道を正確に追うことが勝敗を分ける重要な要素となっています。
球技系スポーツでの動体視力
野球では、時速150kmを超える球速のボールを打者が0.4秒という瞬間で判断しなければなりません。
テニスでは、相手のラケットがボールを打つ瞬間から着地点を予測し、適切なポジションに移動する必要があります。
卓球に至っては、さらに短時間での判断が求められ、動体視力の優劣が直接的にプレーの質に影響します。
格闘技系スポーツでの動体視力
ボクシングや空手などの格闘技では、相手の動きを瞬時に察知して防御や攻撃につなげる必要があります。
相手のパンチやキックの軌道を正確に把握することで、効果的な回避や反撃が可能になります。
剣道では、竹刀の動きを追いながら相手の隙を見つける能力が勝負を決定づけます。
その他のスポーツでの活用例
モータースポーツでは、高速で変化するコース状況や他車の動きを把握するために動体視力が不可欠です。
バスケットボールでは、パスの受け渡しやドリブル中のボールコントロールに活用されます。
ゴルフでさえ、風で揺れる旗や飛んでいくボールの軌道を追う際に動体視力が重要な役割を果たしています。
トップアスリートも重視する「見る力」の秘密
プロのアスリートたちは、動体視力を「第六感」と表現することがあります。
これは、優れた動体視力によって相手の動きや球の軌道を予測できるようになるためです。
多くのプロスポーツチームでは、技術練習と並行して動体視力を向上させるトレーニングを積極的に取り入れています。
スポーツビジョンとしての動体視力の位置づけ
スポーツビジョンとは、スポーツに必要な視覚能力全般を指す概念です。
動体視力は、瞬間視(一瞬で多くの情報を把握する力)や周辺視(視野の端で動きを察知する力)と並んで、スポーツビジョンの中核を成す重要な要素とされています。
日常生活で動体視力が果たす重要な役割
運転時の安全性と動体視力の関係
自動車の運転において、動体視力は生命に関わる重要な能力です。
交差点での右左折時に歩行者や自転車を発見する力、高速道路での車線変更時に後続車との距離を判断する力など、事故防止に直結しています。
特に夜間運転では、対向車のヘッドライトに惑わされずに歩行者を発見するために、優れた動体視力が求められます。
高齢者の動体視力低下が招くリスクとは?
加齢とともに動体視力は徐々に低下していきます。
70歳以上の高齢者が運転免許を更新する際に動体視力検査が実施されるのは、この能力の低下が交通事故のリスクを高めるためです。
動体視力の低下は、階段での転倒事故や、駅のホームでの転落事故の要因にもなっています。
歩行時の安全確保にも欠かせない能力
日常の歩行でも、動体視力は私たちの安全を守っています。
人混みの中を歩く際に他の歩行者との衝突を避ける力、信号のない横断歩道で車の接近を察知する力など、意識しないうちに活用している場面が数多くあります。
動体視力の測定方法と自分でできる簡単チェック
専門機関での動体視力測定
眼科や視力検査の専門機関では、専用の機器を使って正確な動体視力測定が行われます。
回転するドラム型の装置に表示される数字や記号を識別する方法が一般的で、KVA動体視力とDVA動体視力を分けて測定できます。
運転免許センターや一部のスポーツ医学施設でも、動体視力の測定サービスを提供しています。
自宅でできる動体視力チェック方法
専門機関を利用しなくても、簡単な方法で動体視力の目安を知ることができます。
完全に正確ではありませんが、日頃の能力維持や向上の参考として活用できます。
親指を使った簡単テスト
最も手軽な方法は、親指を使ったセルフチェックです。
- 腕を前に伸ばし、親指を立てる
- 親指の爪に焦点を合わせる
- 腕を左右にゆっくり振りながら、爪の形がはっきり見える速度を確認する
- 徐々に振る速度を上げて、見えなくなる限界点を把握する
この方法で、おおよその動体視力レベルを把握できます。
日常的にできるセルフチェック
電車の窓から見える景色の文字を読む、走っている車のナンバープレートを識別するなど、日常生活の中でも動体視力をチェックできます。
テレビ画面に表示される文字を、少し離れた位置から読み取る練習も効果的です。
動体視力を効果的に鍛える具体的なトレーニング方法
基本的な動体視力トレーニング
動体視力は、適切なトレーニングによって向上させることができます。
年齢に関係なく改善の可能性があるため、継続的な練習が重要です。
目で追うトレーニング
最も基本的なトレーニングは、動く対象を目で追い続ける練習です。
- ペンやボールを手に持ち、ゆっくりと8の字に動かす
- 頭を動かさず、目だけで対象を追い続ける
- 徐々に動かす速度を上げていく
- 1日5分程度、朝晩に実施する
このトレーニングは、目を動かす筋肉を鍛え、滑らかな追跡運動を身につけるのに効果的です。
瞬間視トレーニング
一瞬で多くの情報を把握する能力を鍛えるトレーニングです。
- 新聞や雑誌の文字を0.5秒だけ見て、すぐに目を逸らす
- 見えた文字や数字を記憶し、正確に再現する
- 慣れてきたら、より複雑な図形や配置を使用する
- 週3回程度、集中して取り組む
瞬間視能力の向上は、動体視力の基礎となる重要な要素です。
周辺視トレーニング
視野の端で動きを察知する能力を向上させるトレーニングです。
- 正面を見つめながら、左右の手で異なる動作をする
- 中心視野で文字を読みながら、周辺の動きを意識する
- 複数人で協力し、周辺からの合図に反応する練習をする
周辺視野の活用は、スポーツや日常生活での安全性向上に直結します。
日常生活に取り入れやすい練習法
特別な道具を使わずに、日常生活の中で動体視力を鍛える方法もあります。
電車の中で窓外の看板を読む、歩きながら周囲の動きを観察する、テレビの画面で動く字幕を追うなど、気軽に実践できる方法が多数あります。
競技レベル向けの本格的なトレーニング
アスリートレベルでは、より高度で専門的なトレーニングが行われます。
回転ドラムを使った機器トレーニング、VRを活用した仮想空間でのトレーニング、競技特性に合わせたカスタマイズされた練習メニューなどが利用されています。
動体視力向上に役立つツールとサポート方法
トレーニング用具・アプリの活用
現在では、動体視力向上のための様々なツールが開発されています。
スマートフォンアプリでは、ゲーム感覚で楽しみながらトレーニングできるものが人気です。
専用のトレーニング機器も市販されており、より本格的な練習が可能になっています。
栄養面からのサポート
目の健康を維持するための栄養素も、動体視力の向上に重要な役割を果たします。
ルテインやゼアキサンチンなどのカロテノイド、ビタミンA、DHAなどの栄養素が目の機能をサポートします。
ブルーベリーやほうれん草、魚類などを積極的に摂取することで、トレーニング効果を高めることができます。
専門家によるトレーニング指導
より効率的に動体視力を向上させたい場合は、専門家の指導を受けることも有効です。
スポーツビジョン専門のトレーナーや、眼科医による個別指導により、個人の特性に合わせた最適なトレーニングプログラムを組むことができます。
まとめ
- 動体視力は動く対象を正確に見続ける重要な視覚能力
静止視力とは異なり、KVA(前後方向)とDVA(左右方向)の2種類に分類される - スポーツパフォーマンスと日常生活の安全性に直結する能力
球技や格闘技での競技力向上だけでなく、運転や歩行時の事故防止にも欠かせない - 適切なトレーニングにより年齢に関係なく向上が可能
目で追う練習や瞬間視トレーニングなど、日常的に実践できる方法が多数存在する
動体視力は、私たちが思っている以上に日常生活に深く関わっている重要な能力です。
スポーツでの活躍を目指す方も、安全な生活を送りたい方も、この「見る力」を意識することで生活の質が大きく向上します。
今回ご紹介したトレーニング方法は、どれも手軽に始められるものばかりです。
まずは簡単なセルフチェックから始めて、継続的な練習で動体視力を向上させていきましょう。
▶ビジョントレーニングとは?見る力を鍛えて可能性を広げる方法まとめ!

柔道整復師/姿勢改善パーソナルトレーナー
さいたま柔整専門学校卒業。
三郷市内グループ接骨院で院長を歴任。
現在、「姿勢改善Studio きずな日暮里」を運営中。